MusicRadar 2019/04/25
By Amit Sharma
REB BEACH。彼はWingerのギタリストであり、Whitesnakeの新譜ではデイヴィッド・カヴァーデルと共に作曲も手がけている。そして、whammy bar…アームの使い手だ。
Download 2014でWingerが“Madalaine”を演奏した時にThe Dillinger Escape Planのベース・プレイヤー、Liam Wilsonが飛び入りしたことがある。強烈で変拍子てんこもりのノイズ系のThe Dillinger Escape Planが、なぜポップ・メタルのWingerのステージに? ドニントンの歴史上、例を見ない「思いがけない」ゲストだった。けれど、ウィルソンの表情をみると「夢がかなった大ファン」そのものだ。
Download 2014でLiam Wilsonが飛び入りした“Madalaine”
「いやもう、キップはしょっちゅうステージに誰かを上げるんだよ」
と、レブはここ数年を振り返って笑った。
The Dillinger Escape Planの演奏
「本物のベース・プレイヤーが入るのは楽しいよ!たまに泥酔してたり、一度もベースを弾いたことがないやつが入って、うまくいかないこともあるんだ。あの時みたいに、違うスタイルの音楽をやっている人が飛び入りして、俺たちの音楽を楽しんでくれるのは、すごくいいよね」
今回、MusicRadarは、5月10日に発売されるWhitesnakeの新譜「Flesh & Blood」について聞いた。13枚目となるこのアルバムは、2014年にジョエル・ホークストラが加入して2枚目である。ジョエルはTrans-Siberian Orchestraや Night Ranger、ブロードウェイのRock Of Agesなどで活躍してきた。こんなに多様で、対照的な才能を持った2人が並び立つバンドというのも珍しいだろう。レブには最新アルバムの作曲プロセスと、彼を1980年代後半から90年代にあらわれたユニークなギタリストたらしめた「フレットボードの魔術」を語ってもらおう。
―このアルバムは、初めてあなたの名前がクレジットされるWhitesnakeのアルバムですね?どのように進めてきたのでしょうか。
Whitesnakeではこれまで作曲には、まったく関わってこなかった。デイヴィッドとダグ・アルドリッチがやってきたんだ。彼らが作曲チームだったんだ。今回はちょっと違っていて、俺とジョエルと一緒にやりたいということだった。だいたいはペアで作曲したんだ。俺とデイヴィッド、ジョエルとデイヴィッドというようにね。ソロについては、俺とジョエルが一緒に考えることになった。
でも、デイヴィッドがほとんどのアイデアを書いたんだ。曲の基本的となる構成は彼ものだ。アコースティック・ギターを5分から10分ジャカジャカ弾いて、それが何かしらになるんだ。
―リード・ギターの振り分けはどのようにしたのですか?
ジョエルが何かしら提案してきたら、俺はイエスかノーで答える。こちらも同じようにしたよ。行き詰りそうになっても、いつもちゃんと意見がまとまった。ジョエルはシェールのショウに出たり、いつもギグがあって忙しくしていたから、俺の方がデイヴィッドと作業する時間が多かった。ソロについては、俺は自分が弾きたいな、やりたいなと思うものを選んで、そうじゃないもの、しっくりこないものはジョエルが弾く。
―どういう判断なのでしょう?
彼にはしっくりこないものなんて、ないからね。どんなものも弾きこなせるし、いい演奏になる。機械のようにすばらしいソロをどんどん生産するんだよ。
あるソロをジョエルはファースト・テイクでやったんだけど、まるで自分のものみたいだったんだよ。俺が書いたものだったんだけど、さらに彼はもう1回完全に重ねて弾いたんだ。別のソロを完璧に弾いても、また重ねて弾ける。こんなやつは見たことがないよ。俺とジョエルはまったく何もかも違うけれど、それがいいんだ。このバンドのギターサウンドの幅が広がったよ。
―ソリッドボディのギターとスーパーストラトの組み合わせはWhitesnakeのおはこですが、あなたは今もSuhrギターとアンプを使っていますね。
俺の音作りはダイレクトなんだ。SuhrギターをSuhrモディファイのOD-100に突っ込む、それだけ。ワウは使わなくて、たまにSuhrのShibaドライブをタッピングの時に使う。ちょっとコンプがかかったみたいになって、タッピングがピッキングしているように聞こえるんだ。ぜんぶピッキングできればいいんだけど、できないからさ、ちょっとずるをしてるんだよね(笑)。でも、なるべくピッキングしている音になるようにしているよ。
―あなたの最初のシグネチャー・モデルはアイバニーズ製でした。今使っているSuhrよりも、いろいろとんがってましたよね。
すばらしいギターだったよ。いいつくりで、いい音が出た。ビールを飲みながら紙ナプキンにあのデザインを描いていたんだ。プロトタイプはコア材をブックマッチドにしてあるんだ。今も持ってるよ!最近、eBayでよく見るよね。
―タッピングをギターソロに盛り込むギタリストはたくさんいますが、あなたのような巧みな技術のある人はあまり見かけませんが…
Van Halenがやっていたことと大した違いはないんだよ。弦ごとに4音出しながらネックを上下するだけ。俺のプレイに秘訣があるとしたら、弦を移動する時に、直前で弾いた同じ音は弾かないところだろうね。
タッピングをする時、「どや、タッピングしてるぞ!」っていう感じで、音について気に留めない人が多い。だいたいは次の弦に移る時に、同じ音を出しているんだ。俺はスケールを猛烈に弾く時には、弦を移動した時には上げるか下げるかして、違う音を弾くんだ。
―それで、次の弦を空いている指で叩くわけですね。
そう、今弾いている弦上で弾いたのと、次のタッピングでは違う指を使うのがちょっと変わってるところだろうね。俺は小指を使わないし、人差し指は(特に何もないところからの)ハンマリングオンには使いたくなかったんだよ。人差し指はコード弾きの時に使うだけだね。
俺のレガートは、アラン・ホールズワースから来ているんだ。彼のレガートをしっかりわかるようになったのは、ジャン-リュック・ポンティの「Enigmatic Ocean」を聞いてからだね。彼のサウンドが大好きで、このレコードを擦り切れるほど聞いたよ。Wingerの“Headed For A Heartbreak”では、アラン・ホールズワースになろうとしたんだ!
ジャン-リュック・ポンティ「Enigmatic Ocean」2018年のライブ
―自分のソロを学び直すことはありますか?その時の出てきた感じや、即興性とか瞬間的なことなど。
大ファンだという子に教えることがあって、その子はWingerのあらゆる曲を学んでくる。それでソロを教えるところにさしかかると、「わあ、これ俺が弾いたんだっけ?どうやって、なんでこんな風にしたんだろう?」と考えてしまう。いつもびっくりして、結局、20年前にやったことを学び直すことになるんだ。今はぜんぜん違うプレイをしているからね。
―レブ・ビーチのタイミングと感覚とは、なんでしょうか?
俺は自在に弾くようにしている。ムラがないようにとか、きっちり弾くんじゃなくてね。聞く人がしっかりわかる、はっきりしていて盛り上がる音が好きなんだ。曲の持っている雰囲気によるけれど、例えばそれがバラードだとしたら、もちろんゆっくり弾くよね。なんでもかんでも速弾きする人もいるけれど、速弾きで始まって、終わりも速弾きで中間も速いみたいな。俺は基本的なスケールで、いいメロディを作りたいんだ。俺のはだいたいペンタトニックかドリアンだ。もうひとつ知っているのはミクソリディアンで、これはマイナー3rdを半音あげるだけだからね。ハーモニック・マイナーはわからないけど、たぶんできるよ。
学校でギターを習っていないから、できるスケールは少しだけだ。ある場所から別のところへジャンプするのが好きで、弾いているスケールから違う転回を思いつくんだ。ペンタトニックみたいなものだよ。ネック上の違う場所で同じ音がするところを学べば、違うメロディを考え付くようになる。
―あなたはリフも一流ですが、アーム奏法もすごいですよね。“Cutting Loose”とか。
あれは弾いてて楽しいリフだよ。コードを弾きながらアームを使うんだ。“Cutting Loose”は今度出るインスト・アルバムに再録したんだよ。
“Cutting Loose”
全てはリフから始まるんだ。Wingerはリフバンドで、そこがすごいんだよ。ただのコードじゃなくて、リフだ。ソロ作品の中だと“Cutting Loose”はいいリフだよ。Bのコードでビブラートを効かせてアームを使えばツェッペリンぽいサウンドになる。そのアイデアをコーラスの終わりとブリッジに使ってるよ。そうやって作ったんだ。
―アーム・アップではどのぐらい音程を上げるのですか?
だいたい5度上げて揺らすんだ。5度上げて揺らさないとちょっとアホっぽいよ…揺らさなきゃ!
アーム奏法はブラッド・ギルスを見て始めたんだ。“Don’t Tell Me You Love Me”のビデオをMTVで見て、ブラッドがアームを叩きながら震わせているのを見て、なんてかっこいいんだ!と思って。あのノイズを出したくて、アーム奏法をやりたいと思ったんだ。
Don’t Tell Me You Love Me (Live 1989)
すぐにトレモロのついたG&Lを買って、アンプを「very loud」にして、毎日ノイズを出してたよ。ハイになってね…そうやってギターを学んだんだ。学校から帰ったらマリファナをやって、4時間から6時間は毎日弾いてた。そうやって自分のノイズを見付けていったんだ。
―他のギタリストたちから影響を受けた技はありますか?
KISSが初めて見た大きなロック・ショウだったんだけど、その直後に見たのがBostonで、トム・ショルツとの出会いだった。サミー・ヘイガーのオープニング・アクトだったんだ。衝撃だったよ。ステージ上でトムがギターで、魔法使いみたいに音を出していて…すごかった。
テープを低速にしたみたいなノイズだった。トムはうねらせた弦に斜めにピックをあてて、2オクターブ落とす。そうするとすごい巨人みたいな低音が出るんだ。どの曲でもそれをやっていた。あれは俺の中では、いちばんすごいサウンドだった。それで、俺も変わったノイズを出すのに夢中になったんだ。
Boston – More Than A Feeling – 6/17/1979 – Giants Stadium
マジカルな瞬間って、あるんだ。デイヴィッドと曲のソロをやっていた時、思いもよらない音が出てきたんだ。お互いに何かが響きあったんだろうね…そういうのって、二度と出てこない。録音できてたらいいんだけどね!
―微妙にビブラートをかけるときにも、アームをよく使いますよね。
ビブラートをかける時に、アームは本当にいいんだよ。速いリックの後にいいビブラートを出すのは大変なんで、アームを使うに限る。他にも使い方があってね。ミスしちゃった時には、アームを使え!だよ。急降下爆撃か怪獣の咆哮みたいな音を出して、次の音までもたせる。俺はどの音かわからなくなってて、でもだいたいあのへんだとわかってる時にやるよ!コツは、すばやくやること。
―ソロアルバムはどんな感じでしょう?
インストゥルメンタルのソロアルバムは、今年の後半、たぶん秋に出るよ。ちょうど全部できたところなんだ。俺の「Fusion Demos」はiTunesでよく売れたんだ。90年代に出した、4トラックや8トラックで録音した、シンプルな曲が入っていた。ちょっとジャズっぽくて、でも複雑じゃなくて独特な曲だった。自分だけの、独自の音楽を作ったんだよ。聞きやすくて、いろんな人から褒められたよ。
それで、7年間、趣味としてインストの曲を作っていたんだ。家にいる間はずっとドラムとかキーボードをガチャガチャやってね。キップがあれはどうなってるんだって聞いてきて、パソコンの中に入ってるよって言ったんだ。そしたら、リリースしろよって。聞いてくれたことのある人は、すごくユニークな、独特の音楽だって言ってくれた。説明しにくいんだけど、ジャズでもないし、ロックでもない。ジェフ・ベックみたいなことをやりたかったんだ。自分でフェンダー・ローズを弾いて、ベースとドラムを入れて。
長い、すごくメロディックなソロも入ってる。もちろん、必殺の速弾きも入ってるから、期待しててよ!
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